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「双方、それ以上はやめとき。無理くり唸ったら、頭割れてまうで。唸っててもしゃあないし、ちょっと休憩しょ。な。――ほれ、見てみぃ。お守りを売ってる所に、グッズもぎょうさんあるやないか」
こういう時に、彼の身軽さは有難い。
重くなりそうだった空気自体を切り替えるように辰巳大明神が率先して輝孝の腕を引き、売店へと向かう。
旦那様の手招きに応えて大も歩き出そうとしたが、ふと気づいた事があり、塔太郎へと向き直った。
「あの、私が輝孝さんについていますから、ご休憩されますか?」
「えっ? いや、いいよ別に。大ちゃんこそ行ってきいな」
「でも……塔太郎さん、錦天満宮の時からずっと輝孝さんについてはって、今もずっと気遣ってるじゃないですか」
「そら、仕事やもん。別に大ちゃんに心配されへんでも、俺は大丈夫やで」
「そう、ですか」
「うん」
あっさりとした返事に、大の気遣いは空回りとなる。塔太郎はそのまま辰巳大明神と輝孝の後を追い、
「後は俺に任して。他んとこを見るなりして、のんびりしとき。何やったら帰ってもいいしな」
と、大の肩をちょっと叩いて去って行く。
彼もこちらを気遣っての事とは分っていたし、その優しさは嬉しいが、心配しなくていいと言われ帰ってもいいとまで言われてしまうと、やはり寂しいものがある。
いつまでも突っ立っている訳にもいかず、大もその場から離れて売店へ移動し、ずらりと並んでいるお守りや授与品を眺めた。
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