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「この手紙、浸けてみたら絶対何か出よるぞ。そこに、おみくじを浮かべる場所があるから、早よ行こう!」 「ちょ、ちょっと待って下さい旦那様。輝孝さんの手紙は一応、証拠品扱いなんです。深津さんに訊いてみんと……」  辰巳大明神が輝孝を連れて走ろうとするのを、塔太郎が止める。 ただちに深津へ連絡すると許可が出たので、塔太郎が電話を切った瞬間、辰巳大明神は再び輝孝を引っ張って行った。  慌てて追おうとした大と塔太郎だったが、不意に塔太郎が振り返る。そして大の頭を素早く、ぽんぽんと叩いた。 「大ちゃん、でかした! 一緒に来てくれて正解やったわ!」 「へっ!? いっ、いえそんな! 単なるまぐれでっ……!」  嬉しさと照れ臭さで体温が上がり、思わず、逃れるように首を振る。 「あっ、ごめん。でもお手柄やで。ありがとうな」 と手を引く彼に、取る態度を間違えた、と大は焦ったが、塔太郎は特に気にする様子もなく先の二人を追って離れていく。 大も、今は色恋の場合ではないと気持ちを切り替え、三人のいる場所へと赴いた。
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