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手紙に「水を飲め」という言葉が二回も出たのは記憶の改善もあっただろうが、今にして思えば、こういう指示の意味もあったかもしれない。
「さみって、灯篭のとこで話してた子か? それにこの下四桁、さっき言うてた番号やないか」
辰巳大明神が食い入るように言い、輝孝はもちろん、大と塔太郎も息を飲む。
「やっぱり、さみちゃんは彼女なんとちゃうか。どやねん?」
この言葉に輝孝は答えられず、
「とにかく、ここに電話しましょう。俺の携帯でやります」
と、塔太郎が通話画面を開いた。
緊張が走る中、三コールほどで相手が出る。
「もしもし?」
通話口から聞こえてきたのは、若い女性の声だった。
「さみさん、でお間違いないでしょうか」
相手が訝しげに「はい」と言ったので、塔太郎が自分の名前を名乗ろうとすると、横から輝孝が電話を奪い取った。
何の前触れもなく、周りが止める間もなく彼は、
「沙美か」
と言い、向こうも、
「え、お兄ちゃん?」
と、輝孝の事を呼んでいた。
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