3

11/15
1252人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
手紙に「水を飲め」という言葉が二回も出たのは記憶の改善もあっただろうが、今にして思えば、こういう指示の意味もあったかもしれない。 「さみって、灯篭のとこで話してた子か? それにこの下四桁、さっき言うてた番号やないか」  辰巳大明神が食い入るように言い、輝孝はもちろん、大と塔太郎も息を飲む。 「やっぱり、さみちゃんは彼女なんとちゃうか。どやねん?」  この言葉に輝孝は答えられず、 「とにかく、ここに電話しましょう。俺の携帯でやります」  と、塔太郎が通話画面を開いた。 緊張が走る中、三コールほどで相手が出る。 「もしもし?」  通話口から聞こえてきたのは、若い女性の声だった。 「さみさん、でお間違いないでしょうか」  相手が訝しげに「はい」と言ったので、塔太郎が自分の名前を名乗ろうとすると、横から輝孝が電話を奪い取った。 何の前触れもなく、周りが止める間もなく彼は、 「沙美か」  と言い、向こうも、 「え、お兄ちゃん?」  と、輝孝の事を呼んでいた。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!