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沙美は輝孝に、「どうしたん急に」と尋ねようとしていたが、輝孝の方が一方的に喋り出し、 「何でもない。間違ってかけてもうたんや。また後でかけ直す。ほな」  と、有無を言わさず電話を切ってしまった。 呆気にとられた大達だったが、輝孝は無意識にこれをやったらしく、切った直後にはっと正気を取り戻し、 「今……僕、何をしました?」  と、さらに困惑気味だった。 数秒、無言の空気が流れる。辰巳大明神が投げやりに言った。 「もうー無理や! 訳分からん! 沙美って子が、君の好きな子なんちゃうんか? 向こうはお兄ちゃん言うとったぞ。何やお前、自分の妹に惚れとんのかいな!?」 「さ、さぁ? そんな事を言われても、今の自分にもさっぱり分からへんくて」 「分からんとちゃうやろが! わしらはもっと分からんわ!」 「す、すみません……」  彼の剣幕に、輝孝が委縮する。塔太郎や大もつられて辰巳大明神に謝ったが、あまり効果はなかった。
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