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「あー、もう。ちまちま飲んでは、ちまちま思い出して。こんな辛気臭い事やってられんわ!  ――君の体調が崩れたら可哀想やし、こらギリギリまで言わんとこ思ってたんやけどな。もうええ! 君の過去や内情は分からんけど、正体やったら分かるんやぞ。君はなぁ、多分、魚なんや。それも小魚や」  自棄になったのか、辰巳大明神が断言する。輝孝が意表を突かれたかのように、ぴたっと止まった。 「……自分が? 小魚?」 「そうや。実体と化けてる部分との比率から、だいたい五センチくらいの大きさとちゃうか。背中から尖った気配もするさかい、背びれに棘があるんやろ。せやけど海のもんとちゃう。かと言って、川魚とも微妙に違う。化けるのが十八番のわしが本気出したら、そこまで分かんのや」  予期せぬ行動を起こして、畳みかけるように自分の正体が魚だと言われた輝孝。体調こそ問題ないが、すっかり混乱していた。 落ち着かせるために塔太郎が一旦間に入り、輝孝を大に預けた。 「旦那様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。そして、ご教授ありがとうございます。――やっぱり、今の輝孝さんは人間に化けた姿やったんですね。何の魚かは……」 「正体は見抜けても魚博士とちゃうんや。種類までは知らん!」 「菅原先生なら、ご存じかも」 「おぅ、それや! 電話してみい!」  何だかんだ言いつつも、本当に怒ってはいないらしい。後で大がこの時の事を言うと塔太郎いわく、 「やいやい言うたはる時の旦那様は、全然大丈夫や」  との事だった。
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