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「失礼致します、高龗神(たかおかみのかみ)さま。こちらにいらっしゃいますか。洛東の祇園より、辰巳の神以下四名、お声を拝聴したく参りました」  朗々とした声は、山の中や本殿に吸い込まれていくようである。 しばらくすると、本殿の中からぱしゃんと水音がした。 「はあい」  という、綺麗な男性の声がする。高龗神だった。 「久しいなぁ、辰巳さん。今日は若いお供の人を、たくさん連れたはるんやねぇ。着たはる夏大島も、素敵やんか」 「おおきに、すんまへん。本来ならば紋付のところを、横着さしてもろてます。――今日のお供の内の二人は、警察なんです。あやかし課ですわ」 「あぁ、そうなん。お巡りさんなん」  向こうはこちらを見ているらしいが、声しか聞こえないので、まるで本殿が喋っているかのようである。 会話の間、本殿から涼しい風が流れて来る。風と言うよりは、水から発生する冷たい空気のようなものだった。
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