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「高龗神さまのおっしゃる通り、こちらの富女川輝孝という男、実は人間に化けた小魚でございます。せやけど、ちょっと頭の中に靄が出来たとかで、自分の事が分からんようになっとるんです」 「あれあれ。それは大変」 「それで、高龗神でしたら治して頂けるのではと思いまして、こうして参った次第でございます。何とぞ、天下に名高い貴船明神のお力で、洗い流しては頂けませんか」 「私達からも、お願い致します」  辰巳大明神に合わせて、大達も頭を下げる。高龗神は快諾してくれて、 「分かりました。ほな早速やりましょう」  と、言ってくれた。 数秒後、本殿からまた水音がしたかと思うと、輝孝の足元から水が湧いて来た。水たまりは徐々に量を増し、やがて、輝孝の足元を浸し始める。 彼が思わず退こうとするので辰巳大明神が制した。 「動いたらあかん。輝孝さんの体を診たはるんや」  それが終わったかと思うと、本殿の扉が開いて突風が吹き、中から何かが飛んできた。 反射的に輝孝をかばった塔太郎の胸に当たったそれは、ガラス製の瓶である。中には一点の濁りもないような水がたっぷりとあった。 高龗神いわく、本殿の下に龍穴があって、そこから直に採った水との事だった。 「それ、飲みぃ。頭の中、すっきりするよ」  瓶を渡された輝孝は、怖さを払拭するように深呼吸してから、御神水を飲んだ。
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