1252人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
「今のは、一体……。あっ。塔太郎さん! 大丈夫ですか?」
「うん。そっちは?」
大が気にするまでもなく、彼は余裕そうである。後は輝孝の様子だけだが、状態は芳しくなく、耐えるように肩で息をしていた。
当然、大も塔太郎も焦ったが、辰巳大明神だけが涼しい顔をしており、
「記憶が全部戻って、しんどいんやな。綺麗なお水、もうとき」
と言うのと同時に、本殿の中から、今度は巨大な水の龍が現れた。
先程の粘土など比べものにならぬ程大きく、水で出来た体の透明度は、幾重にとぐろを巻いても向こうが見渡せそうである。
「ちょっと失礼しますよ。今、治すさかいね」
高龗神の言葉が、龍の口から発せられる。この水の龍こそが、高龗神の姿らしい。
龍は頭を天に向けて体を伸ばし、そのまま下へ曲げかと思うと、間髪入れずに輝孝を飲み込んだ。まるで細長い水槽に入れるかのように、彼を腹へと納める。
大と塔太郎は驚きつつも高龗神を信ずるしかなく、透明な腹の中でもがく輝孝は、こちらを見つめて気泡を一つ吐いた後、ふっと姿を消してしまった。
「輝孝さん!?」
最初のコメントを投稿しよう!