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「――ほな、今でも京都のどこかで、ミナミトミヨは生きてるんですね」  帰りの電車に揺られながら、塔太郎が感心する。 輝孝は肯定しつつも、気まずそうに頭を掻いた。 「そう言うと立派なんですが、元々が強くない魚です。人間の生活をしても、早世や急逝、ストレスでころり、というのも普通にありました。なのに生まれる子は少ない。多産が出来なかったんです。人間のもとへ嫁いだり、逆に人間を迎えたりもしました。が、合わなかったのか、やはり産む前に……そんな訳で、結局先細りしたんです」  十残った家が七、そこから六、五、とだんだん寂しくなってゆき、平成になって輝孝が幼少の頃には、彼の生家である富女川家、芹田家、そして矢野家の三つにまで落ち込んだという。  ただ、そこまでくれば三家の絆はより結託し、家族ぐるみで支え合いながら暮らしていた。 各家の子供だった輝孝、芹田伊知郎、そして矢野沙美の三人も当たり前のように仲良くなり、毎日のように遊んだという。
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