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「僕と沙美が兄妹となってからも、伊知郎を含めた幼馴染三人は仲良しでした。さみと伊知郎が同い年、僕が一つ年上で、この伊知郎が真面目でいい奴なんです。あいつとは男同士ですから、親友であると言えます。天然なところもある沙美が彼を振り回して、僕がたしなめるのが日常でした。楽しかったですよ」  その後、富女川家が三人目を育てるのは経済的に難しく、芹田家も、伊知郎の他には授からなかった。 こうして今日、ミナミトミヨの家はとうとう二つとなり、その次世代は、事実上三匹のみとなったのである。 「けれど、もう誰も嘆いてはいません。というか、五家くらいになった時点で、皆諦めていたようです。だからせめて、今いるものは精一杯生きようという話になり、自分達三人は種族の枷を背負わされる事なく、高校、大学と上がり、普通の生活を送ってきました。ミナミトミヨというよりは、もう人間です。 そんな中、沙美と伊知郎が恋人同士になりました。元々二人は惹かれ合っていたんですが、互いに奥手で……だから、沙美にせがまれて貴船神社へ行った事があるんです。今日、思い出していた記憶はそれです。 ――二人が結ばれて嬉しかったですよ。何せ、妹と幼馴染ですから。うちの両親も、伊知郎の両親も、大賛成でした。そうして婚約がまとまった直後に僕の父親、その翌年に母親が亡くなりました。二人とも、『何も悔いはないけど、沙美と伊知郎の結婚式は見たかったなぁ』と言っていました」
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