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「ただ、一緒に仕事をする時もありまして……。最初の岡倉は、会社の水が飲めない僕を笑うだけでした。しかし、毎日欠かさず水を持って来る様子に何かを感じたのか、裏で僕の事を調べていたようなんです。ある日、ニヤニヤした顔で突然言われました。『お前、絶滅した魚なんだって?』と。もちろん、半ば無視の形でとぼけました。けど、その態度が悪かった。彼は余計に絡むようになって、どうやって人に化けているのか、他の術は使えるのか等と、しつこく訊いてくるようになりました。……岡倉はそういうものに興味があって、知識を得て習得して、より強い存在になりたかったのかもしれません」
その後、彼の言動はエスカレートし、小魚の輝孝が人間として生活出来ているのは、輝孝の霊力が強いから、あるいは強力な術を使っているからだと考えたらしい。
「それは、どちらも事実です。僕らミナミトミヨの化ける術は、五センチの体を三十倍以上に変える規格外なものです。しかもそれを、ほぼ一生保って生活するだけの霊力が遺伝的に備わっている。だから、岡倉の見立ては完全に合っていました。だからこそ、知られたら何をされるのか怖くて、肯定する訳にはいかへんかったんです」
輝孝は、岡倉の言葉を受け流したり無視をして、波風が過ぎるのを待っていた。
ところが向こうはこれを挑発的と取り、反射的に、輝孝へ酷い言葉を浴びせたという。
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