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「――喫茶店かぁ。和服が制服って、お洒落やな。私も着てみたい。……っていうか、まーちゃんの就職先って、喫茶店やったっけ? 高校を卒業して、先輩のいる会社に行ったんじゃなかったっけ」 「そうやってんけど、そこは辞めてん。その後、知り合いに紹介してもらって……」 「それで、今のところに転職したんやな。なるほどー」 高遠梨沙子が器の耳を持とうとして、熱かったのか手を引っ込める。 ふう、と息を吹きかけてうどんを冷ましているのを見て、大も自分のうどんに箸をつけ、上に乗っている具を食べた。  今日は大の公休日で、向かい合って座っている梨沙子は、大の母校・鴨沂高校の同級生である。 卒業後、梨沙子が京都産業大学へ進学し、大が就職となってからは、生活の違いゆえに、互いに連絡が途絶えていた。 しかし、今年の祇園祭で見かけた事をきっかけに大が連絡を取ってみると、梨沙子も喜んであっという間に再会しようという話になり、彼女の希望で、錦市場の中にあるこの「冨美家」で昼食となったのだった。
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