lesson.1

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事務所、スタジオの一番奥、大きな暖簾が掛かっている。ロッカーと事務用戸棚で区切った入口、ドアはない。休憩所も兼ねているのか冷蔵庫やキッチンもある。事務用品、いろんなものが無造作に置かれその中央に事務机が四つ並び、白いテーブルが端に置かれている、周りには丸いスチールの椅子が置いてあった。どうぞと言われ丸椅子に座る。 コーヒーが出てきた。向かい側と横に座られた。 「君、中学は何処?」 「二中でした」 「そっか、じゃあ知らないのか・・・俺はここのオーナーの秋山こいつは従業員の高原、知佳は俺の姪っ子なんだ、君の名前聞いてもいいかな」 「原 健一です」 「原君、知佳のこと内緒にしてもらえないかな?」 「どうしてっすか?」 「知佳はギターをやってることで中学校の頃いじめをうけてたんだ」 いじめ? 「俺はな、あいつを守るために俺の女だって言ってる、オーナーには悪いけどな」 「まあ、俺も承認してるし、キヨはそんなことしないのわかってるから」 ハア?なんなんだ、いじめって 「でも、あいつ、クラスじゃ、影が薄いっていうか、静かで、さっきみたいに笑ってるところなんか見たことないし」 それにギターって、昨日忘れ物だって。 「だから波風を立てないでほしいんだ、君、イケメンだね、クラスじゃ人気者だろ?」 「・・・まあ・・・」 今あいつは大事な時を迎えている、これから先、一生を左右されるくらいの大事な一年なんだ、だから、ここでの事を秘密にしておいちゃくれないだろうか。真剣な顔つきで俺に言う。 一生? 「でも、俺、先輩たちとここへ来た時、クラスメイトって言っちゃいました」 「でも、これ以上君が何も言わなければ何も起きない」 「頼む、知佳のこと秘密にしてくれ」 「へー、ナイトが二人ですか、どんな秘密なのかな、俺も混ぜてくれたら秘密にしてもいいですよ」 高原はガタンとイスを倒し首元に手をかけた。 「てめー」 「待て、わかった、明日の夜九時にここに来れるかい?」 「九時って閉店ですよね」 「入り口のシャッターの横に扉があるからそこから入ってくればいい」 高原は手を離し椅子を直し座った。 オーナー、こんなガキにそこまで。ガキだと、俺は高原を睨んだ。だが彼も鋭い視線を送っている。 「いや、そこまでしなきゃいけない、あいつの将来がかかってるから、明日は学校で、ここの事は話さないでほしんだ、できるかい?」 「わかりました、夜九時ですね、伺います」 「ありがとう、ゆっくりしていって、キヨ、休憩入っていいから」 オーナーが出ていった、二人が残る、高原はやかんに水を入れガスに火をつけた。 「飲んだら帰れ」 「いじめってさ、あいつも何かしたんじゃねえの?」 俺は胸ぐらをつかまれた、高原の顔が近づく。 「何にも知らねえくせに、大きな口叩くんじゃねえぞガキが!」 「キヨ君、ごはん、あれ、お客さん?」 女性が入ってきた、きれいな人、女優みたい、胸ぐらをつかんだキヨが離す、椅子の上にちょこんと座った、女性から目が離せない。舌打ちが聞こえ、知佳の同級生と言う、女性はおばさんと言ってきた。高原と何か話をしている。 「俺帰ります」 「あら、もう帰っちゃうの?」 ―さよ子さん 高原は首を振った。 「あ、あの、山田は帰り何時ですか?」 「今日は日曜だから、十一時かな」 「そんなに遅くなるんですか?」 「うん、いつもよね、キヨ君」 あっちゃー、さよ子さん、口チャックです、オーナーに怒られても知りませんよ、こそこそいうが聞こえてるよ! 「あ、またいらないこと言っちゃった、今のこと内緒ね、お願い」 手を合わせる綺麗な女性から優しい香りがした... 「ワ、わかりました、それじゃあ、明日、さようなら」 「バイバイー・・・キヨ君、明日って何?」 高原の声が後ろから聞こえてくる。俺は事務所を後にした。 階段を降りるとレジにいる彼女の周りには男性客が話をしている、笑顔、なんて顔で笑ってるんだろう。 それを横目に俺は店を後にした。
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