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「私は信じられないの、原君が川上君ほど大人で黙って二人を見守ってくれているあの子のようには見えない。ごめんなさい、たった一年なの、一年、黙って見てあげて、それが終われば、知佳ちゃんも・・・」
「さよ子さんありがとうございます、原君、お願い、一年だけ黙って見過ごして、それが終わったら、あなたの云う事なんでも聞くから」
「おい、ジャリ、そんな安請け合いしていいのか?」
「だって、これだけの事を知ったのに、一年も我慢してもらわなくちゃいけないのに」
「わかった、誰にも言わない、でも、どこから漏れるようなことがあっても、俺は関係ありませんから、それだけはお願いします」
「わかった、それじゃあ、今後、この事は秘密で通してくれるね?」
「はい」
「遅くなったね、送るよ、知佳帰る準備をしなさい」
何処までだい?道を聞かれた。知佳の家から二つ目のバス停、車に乗せてくれるというバスのように止まらない、家までは十分で着く。
「秋山さん、俺、また行っていいですか?やっぱり・・・行けないか」
「さよ子の言葉かい、だったら君自身が気を付ければいいじゃないか、ただそれだけだろ?」
やさしく微笑む横顔、なんか素直になれた。
「あ、ここでいいです、ありがとうございました」
「じゃあね、気を付けて」
後ろで寝ている知佳を見た、俺は車に頭を下げた。
ベッドの横になって考えていた、なんで彼女は周りの人が守ってくれたんだろう。
俺なんか、誰も守ってくれなかったのに。
小学校の時に気持ち悪いと言われた。女とおんなじピアノだってさというやつらに負けた。
でも、教室はやめても離れることはできなかった。
中学三年からつるんでいた先輩と、夜な夜な歩いた。
それは、なんか新鮮で、大人になったような気がしていたけど。
「趣味の延長かよ、くそー、コンクールだけじゃねえだろ!」
布団の中にもぐって叫んだ!
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