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「わー、ご飯でっかいね~、トマ」 「まあな」 「それに、いっぱいいる」 「ここは街だから」  そう言って跳び急いだ。オレは富士田が住むアパートに幼なじみのシンと向かった。  部屋の中には少し前に別れた富士田が眠っていた。彼は独身で、もうすぐ40のおっさんだ。 「富士田、戻ってきたよ。またよろしくな」  この部屋はやっぱり居心地がいい。1年暮らしていたから愛着もある。 「富士田、悪い。出勤時間だから行くよ」 「トマ、俺は?」  10年ぶりに再会したシンが俺に向かってそう言った。こいつの行き先か……単純な方だからな。 「シン、富士田の後輩のところへ連れてくよ。春野ってんだ、どこかおまえに似ていて、いいやつだからうまくいくよ。きっとな」 「いいやつなんですよね。その春野ってやつ」  シンは俺に少し似ている。兄弟みたいなものだから当たり前だが。 「シン、急ごう」  オレたちは富士田の部屋を出た。
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