一万三千体の「青い目の人形」

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一万三千体の「青い目の人形」

島国の軍部が、海を隔てた大陸への野心をむき出しにして、世界中の国々から非難を浴びせられ、戦火の匂いが立ち始めた頃のことです。 西の国の青十字慈善団体が音頭をとって「世界の平和は子供から」の合い言葉で親善活動が提案されました。 この活動のひとつとして西の国の “善意の人たち” から集められた一万三千体の「青い目の人形」がこの小さな島国に贈られてきたのです。 子供たちが通う全国の小学校や慈善団体に配られました。 リカのメリーちゃんはそのうちの一つだったのでしょう。 これを機会に両国の親善も深まり青十字慈善団体の計画は一時は目的を達したのです。しかし、それから二十年後、この島国は、西の国だけでなく、世界中の多くの国々を相手に戦争を始めてしまいました。 島国の一部の国家指導者が、“小さな” 島国では満足できず、“大きな” 島国になろうとしたのが原因の一つでした。 戦争が長引くにつれ、お母さんの気力が失われていくのです。 お母さんは外国の言葉、特に西の国の言葉が得意で、戦争前はその国にお友達がたくさん居たようです。だから、戦争が早く終わってくれるようにと祈っていたのではないでしょうか。 戦争で犠牲になるのは何時も老人と子供、女の人など弱い人たちです。小さ な島国の食料不足は深刻になり、これらの人たちにまともに影響を与えました。 子供たちはどんどん痩せ衰えていきます。子供たちに食べ物を与えるために自ら餓死していったお年寄りもいたくらいです。 しかし、「お腹が空いた」という言葉を口から出すことは出来ませんでした。 お巡りさんの耳に入ろうものなら大変です。 「戦地の兵隊さんのことを考えろ! 国賊! 非国民!」 罵られたうえ顔の形が変わるほどぶん殴られました。 若い人たちはみな戦争に行っていましたからぶん殴られるのは、残っている老人、子供、女の人です。 すべてが、お国のため、戦争のためです。 街中に、国中に、戦意高揚の標語が張り巡らされました。 【欲しがりません 勝つまでは】
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