氷を入れてものを冷やす木箱の到来

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氷を入れてものを冷やす木箱の到来

リカのメリーちゃんはお母さんが最後まで守り通したのがせめてものことでした。お母さんが救った人形はメリーちゃんだけではありませんでした。 壊されようとする青い目の人形を探し求めては走り回っていたのです。 お巡りさんに見つかったら大変なことになるのに、お母さんはとにかく青い目の人形を救うことに真剣でした。 リカが来てから一年経ち、風が暖かくなる初夏の頃でした。 狭い我が家の台所に不似合いな、ぼくの背丈くらいある古い大きな頑丈な木箱が運ばれてきました。   木箱には、上の扉と下の扉があり、中に何かを入れるようにできています。ぼくの問いかけに、お母さんは見ていれば分かりますというだけでした。 数日後、氷屋さんと称する人が、大きな氷を運んで来て木箱の上の扉を開いて中に入れました。 ものを冷たくする箱だったのです。 今まで見たことも聞いたこともない便利な木箱が来て、ぼくは大喜びでした。お母さんは冷蔵庫というのよと初めて教えてくれました。 戦争中のこの時代、冷蔵庫を持っている家など、ぼくの友達には一人もいません。しかし、わが家には冷やして食べるものも、保存しておくものなど何もないのに・・・。 ぼくは毎日、氷を掻いて取り出しては、口に含んで喜んでいました。リカは勿論始めて見るのでしょうが、あまり嬉しそうな顔をしません。ぼくが差し出す氷のかけらを、いやいやをして受け取ろうとしないのです。
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