第一話 約束

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『ハアー?ライブツアー?』 「そう、四大ドームとさいたまアリーナ」 ちょっとストップ、何言い出してるの、今日から学校始まったばっかありなのに、驚いてそんな言葉しか出ない。 「いやいや、一年生だし学業優先だし、牧さんはそんなのしなくていいって言ってくれたし」 青山のレコード会社本社で打ち合わせ、キヨ君がスーツ姿で来ていた。 「牧さんはこの際いいの、二人でお願い、夏休み中だから」 住ちゃん、そんな簡単に。無理だよー! 「キヨ君、社長はなんて言ってるの?」 「ゴーサインは出してる、後はお前らだけ」 「何それ」「どうする?」 どうするじゃないわよ。ピースのコンサートのバックとして私たち二人は商品として最初の仕事をもらう事になったのだけれども、初めての事、ライブなんか出たこともやったこともないし、あーでも去年文化祭でやったのか、でもな―プロだもんな。 「あのな、二年待ったんだぞ、約束だ、知佳も原も出ろ!」 後ろからあの三人がやってきた。 「もうね、オッチャンばっかりで、先はないの、大したことは無いからさ」 「きみちゃん、そういう事じゃなくて」 「見て見て、チケットのデザイン、いいだろ?」 目の前にはコンサート関係の物が拡げられ行く。 「島さん、これって俺と知佳じゃないですか、モロ制服姿だし」 「ちょっとストップ!」 私ライブなんかやったことないし!そう、俺もない、どうすんだ? 大丈夫、たった十五曲だから。はあ? そうそう、その前に二、三個小さいライブ手伝って。だからやったことないって! 「知佳ちゃんミニスカートはいてさ」「何でミニ限定なんですか」 「イヤー、かっこいいじゃん、その方が」 大人、いや、おやじたちにいじられる知佳。テーブルに肩肘をついてぼそりと言った。 「やってみよかなー」 「ハア?あんた大丈夫なの、今からめちゃくちゃ忙しくなるのよ!」 何、原ちゃん、もう尻に敷かれてるの?肩に手が回る。聞いてくれますか?もう、うるさくて。 「あんたが管理できないからでしょうが!」 顔を真っ赤にして云う知佳を見てみんながクスクスと笑っている。 ねえ、話進めていい?住ちゃんが話し始めた。 五月から、リハーサル、六月の末から東京で二つ、大阪で一つライブをして、またリハーサル、八月、九月にまたがってのドームコンサート参加、話はどんどん進んでいく。もう去年のうちに決まっていた物だから私たちの参加はイレギュラーと言ってもいい、裏ではどんどん進んでいるのだ。 目の前に渡された書類を見て、ため息をつく知佳、俺も見て、これは無理だろうなと思う。 「住ちゃん、やっぱり、俺らムリだよ、これじゃあ、管理できない、キヨさんも無理でしょ、俺らに付きっきりじゃ」 私たちの話を聞いているのか、たびたび入る携帯に出てはなんか話をしてるキヨ君 「大丈夫よ、キヨ君、言ってないの?」 「決まったばっかりでしてね、まだ言ってないんです」 「あらそうなの?」 「そろそろ来るとは思うんですけどねー」 伸びあがるようにして辺りを見ると、住ちゃんも見まわした。
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