第二話 新しい出会いと上級生

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第二話 新しい出会いと上級生

一つの出会いが、人を引き付けるようにまた人を結び付けていく、これも奇跡、これが続くとどうなるんだろう、いつか、それも奇跡とは呼ばなくなるのかもしれない。 ただ、時の波に揺られて流れ着いていくようで、その先にある未来なんてわかるはずもなくて。このまま流されていいのだろうかと、今は考える余裕すらなかった。 「おはよう」「おす」「おは」 一年の音楽科全員が入ってきた。ここは講堂、コンサートや、演劇なんかが出来る本格的なホールだ。初めての実技、みんながどういう事をするのか興味津々だ。 「山田、ギターは?」 クラスとも打ち解けてきたというか、私達の周りにも気のいい仲間は寄ってきて、数人のグループが出来上がりつつある。研究室で預かってもらってるから取りに行って来るね。「誰の研究室?」「もうお前らそんな人と付き合ってるのか?」「誰だよ?」 「伊勢教授」「ウソだろ!なんでお前らがあの教授の所にいけんだよ」 「イヤー、ちょっとした知り合い、ってーとこか」 「ちょっとって、この大学のトップだよ、おたくらどんな関係なの?」 「んーいろいろ世話になったとだけ言っとく」「へー、なんかすげーな」 ーじゃあ始めるぞ、楽器の者はそのまま、声楽は向こうへ移動してくれ 「行こう蒼井君」「じゃあな」 「おう」 蒼井君たちは立ち上がると手を振って行ってしまった。 「がんばってね、おまたせ、ねえ、蒼井君てパート何かな、あの声じゃあ低い方だよね」 「案外、バスだったりして」 ―ピアノ手を上げろ 「はい」「へーい」 ―七人か少ないな、お前ら二回弾いてくれ、原トップバッター、悪いが三回頼む 「はーい」 やっぱり、さすがだな、こそこそいう声が聞こえる なあ、あいつ何がすごいんだ? お前知らないのか、あいつ、ピースやフェイク、テスターなんかのバックやってんだぜ、楽譜は読めるし、何でも、一回聞いただけで弾けるって聞いたな。 すごいでしょと言いたくてうずうずする。 ―寝るなよ、ちゃんと聞いてレポート提出だ、○○上がれ クラシックはいいな、優しくなれる。 同じ曲を弾く、それに合わせる声楽部門の子たち。歌う人の声、感情の入れ方で聞こえ方は千差万別だ。 ―次、交代 「お疲れ」「どうだった」 「うん、眠れそう」「お、いいね」 「私、健ちゃんのクラシック好きだな、またリスト聞かせてね」 「おう」 ―蒼井、上がれ 「はい」 演奏が始まった、みんなが息をのむ、一人だけ、体育会系で短い髪に日に焼けた黒い肌は、どう見ても野球部のキャプテンぽい、でも、今高校を卒業したばかり、彼も何年後かには東京の水にどっぷりつかるんだろうな。 ? 「何、ソプラノ!」 いつもの話し声からは想像のつかないすんだ高い声、まるで声変りをしていないような声がホール内に響いた。 思わず拍手をした。 「すごいね」「アー初めて聞いたあんな声」 「ハア、緊張したー」「お疲れ」「すごいね、裏声みたいに高いのね」 「拍手ありがとな、俺ののど変わってるんだ、低いのも出せるけど疲れる」 「普段の声、低いのにな」 「自(じ)はな、力入れないと、こんなんだ」 ―次、すぐ楽器はじめる準備しろ
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