第三話 ファーストアルバム

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やっと新しい新居が半分完成。音楽教室の引っ越しが始まった。スタジオや新ビルの倉庫に置いてあったピアノやキーボード、机、椅子を運び出す。みんな総出でこんなに従業員がいたんだなと感心しちゃった。 そのたびに新しい設備を見て回る 「すげー、優こだわりの木の教室、はだしだいいねー」 「そうだろ、床暖入れたんだ、うちの子や将太もここだったら走り回れる」 「じゃあ、幼児用の教室にするの?」 「いまんところな」 「保育所みたい」 「うちの嫁さん免許持ってるからね」 「そうだ、ちあきちゃんあるんだ、凄い、保育所出来るじゃん」 「それは無理だ、でもちびどもが集まる分にはいいだろ、天気関係ないし」 「まだまだ増えそうだしな」 「お前ん所もそろそろか?」 「ほっとけ」 「ねえ、もしかして、トシさんのぞいていった?」 「シラーねーぞ」「何で?」 「ここ見て?」 何かで掘ったような跡、トシ専用 「何だこれ?」トン。パタン 壁に手をついたとき一部が倒れてきた。 「椅子?」「ほんとだ、おもしれー」 二人は近くを叩く、また、パタンと言って椅子が出てきた。 「邪魔にならなくていいね」 座ってみる、今はない前の教室が目の前に広がる、そうか、お気に入りね、よかったね、トシさん。 「やられたな」「お気に入りの場所になりそう」「前のだいぶ気に入ってたもんな」 「へー、上もすごいね、緑の木の下にいるんだー」 「スゲーな、これもお前か?」 「うん、いいだろこんなのがあっても」 「そうだな」 天井を見上げると大きな木の下にいる様、落ち着くな、川上君、もうちゃんとパパなんだな。そして一点に目が行く、一本だけ色褪せ古さを感じさせる白木の細い柱。 そこには、私の家族の思い出がある。消えそうなマジックで書かれた身長は、消えないように、ほってあった、父の文字がずっと残される。 そして新しい文字、子供たちの身長と名前。ここにもトシさん、どんだけ好きなんだか。 「姉ちゃん、義兄さん、叔父さん事務所に来いって」 「ヘイ、ヘイ」 椅子を元に戻した。本当にくつろげる空間だな。でて行くのが嫌になる。 「まー君いろいろありがとな」「川上さん、今度勉強お願いします」 「アルバイト代から引いとくわ」「えーそれはなし―」
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