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やっと新しい新居が半分完成。音楽教室の引っ越しが始まった。スタジオや新ビルの倉庫に置いてあったピアノやキーボード、机、椅子を運び出す。みんな総出でこんなに従業員がいたんだなと感心しちゃった。
そのたびに新しい設備を見て回る
「すげー、優こだわりの木の教室、はだしだいいねー」
「そうだろ、床暖入れたんだ、うちの子や将太もここだったら走り回れる」
「じゃあ、幼児用の教室にするの?」
「いまんところな」
「保育所みたい」
「うちの嫁さん免許持ってるからね」
「そうだ、ちあきちゃんあるんだ、凄い、保育所出来るじゃん」
「それは無理だ、でもちびどもが集まる分にはいいだろ、天気関係ないし」
「まだまだ増えそうだしな」
「お前ん所もそろそろか?」
「ほっとけ」
「ねえ、もしかして、トシさんのぞいていった?」
「シラーねーぞ」「何で?」
「ここ見て?」
何かで掘ったような跡、トシ専用
「何だこれ?」トン。パタン
壁に手をついたとき一部が倒れてきた。
「椅子?」「ほんとだ、おもしれー」
二人は近くを叩く、また、パタンと言って椅子が出てきた。
「邪魔にならなくていいね」
座ってみる、今はない前の教室が目の前に広がる、そうか、お気に入りね、よかったね、トシさん。
「やられたな」「お気に入りの場所になりそう」「前のだいぶ気に入ってたもんな」
「へー、上もすごいね、緑の木の下にいるんだー」
「スゲーな、これもお前か?」
「うん、いいだろこんなのがあっても」
「そうだな」
天井を見上げると大きな木の下にいる様、落ち着くな、川上君、もうちゃんとパパなんだな。そして一点に目が行く、一本だけ色褪せ古さを感じさせる白木の細い柱。
そこには、私の家族の思い出がある。消えそうなマジックで書かれた身長は、消えないように、ほってあった、父の文字がずっと残される。
そして新しい文字、子供たちの身長と名前。ここにもトシさん、どんだけ好きなんだか。
「姉ちゃん、義兄さん、叔父さん事務所に来いって」
「ヘイ、ヘイ」
椅子を元に戻した。本当にくつろげる空間だな。でて行くのが嫌になる。
「まー君いろいろありがとな」「川上さん、今度勉強お願いします」
「アルバイト代から引いとくわ」「えーそれはなし―」
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