こぼれ話 ~霧、晴れるとき~

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「あの、三郎さん」 「なんだ?」 「えっと……あの方は私のお父さんで……この子たちのお父さんでもある……んですよね?」 「そうだな」 「てことは……私と、この子たちは……」 「姉妹だな」 「そうなの!?」 「そうでした!」 「そうなんだ……」  管狐ちゃんたちが、今度は私の周りをコロコロ跳ねまわり始めた。 「わ~い、”お姉さん”だ~!」 「そうなんだ……うわ、なんか実感ないなぁ」 「まぁそりゃそうだろうな。けっこう歳の差姉妹だろうしな」 「そ、そうですよね……」  管狐ちゃんたちをちらりと見る、みんなキャッキャと跳ねまわっている。楽しいことが大好きで、じっとしていられないといった感じだ。……可愛い……!  こんな小さな妹たちができるなんて、思ってもみなかったなぁ……! 「みんな、何歳かな?」 「……なんさい?」 「えっと、修行に入ってから5年が経つので……」 「5年かぁ……」 ……ん? どうみても幼児だけど、もう5年修行してる? まさか、赤ちゃんの頃から……?  混乱する私の表情を受けて、三郎さんが答えを言った。 「え~と……今年で55になるんじゃなかったか?」 「…………55!!?」 「そうなの!」 「まだ55歳ですか」 「早く大人になりたいです……」 「え……え? 55歳って……子供なの?」 「こいつらはまだ阿紫霊狐だからな。狐っていうのは50歳を超えたら修行を始めて、100歳を超えたら地狐……まぁ一人前の妖狐扱いになるんだ」 「50歳……それじゃあ私って……」  わなわな震える私を、管狐ちゃんたちが心配そうにのぞき込む。 「おねえさん、大丈夫なの?」 「私たち、未熟だけどがんばります」 「おねえさんは……今、なんさい?」 「え………………」  どうしよう、答えるのが恥ずかしくなってきた……。だけどお酒が入ってちょっとフラフラの三郎さんは、無慈悲にも答えた。 「お嬢と同い年だから……今年で16歳だな! いやぁ若いっていいねぇ」 「16さい……」 「16さい……」 「16さい……」 「妹なの~!!!!」  管狐ちゃんたちが……さっき以上に喜んでキャッキャキャッキャと跳ねまわる……。  この数か月で、小さい頃から抱えていたモヤモヤが晴れたばかりか、お父さんと会えるようになり、そして……こんな可愛い”お姉さん”が、できちゃいました……。 「やれやれ……瑠璃嬢の人生も、なかなかに波乱だなぁ」
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