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こぼれ話 ~天狗たちの与太話(方言編)~
※今回はみんな、地元の方言でお喋りしてます。多少ニュアンスが違う表現もあるかもしれませんが、ご了承ください。
「結局太郎のやつ戻ってこなかったべな(結局太郎のやつ戻ってこなかったな)」【神奈川弁】(以降、【神】)
「こりゃ……もしかするともしかするのでは?(これは……もしかするともしかするのでは?)」【伊予弁】(以降、【伊】)
「ああ、もしかしなかばってん……一緒に居眠りば始めたな(ああ、もしかしなくとも……一緒に居眠りを始めたな)」【博多弁】(以降、【博】)
「あれだべ。『三千世界の鴉を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい』っしょ?(あれだな~『三千世界の鴉を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい』ってやつ?)」【神】
「それはたぶん違うな。太郎とお嬢のは……たぶん本当に寝てるだけだらずし(寝てるだけだろうし)……」【長野弁】(以降、【長】)
「確かに」【博】
「もう一個の方の『メオトノチギリ』はいつになることやら~」【神】
「セイ、下品じゃよ(下品ですよ)」【伊】
「下品て言うけど、夫婦になるんだべ? したっけ必要なことだべさ(だったら必要なことだろ)」【神】
「夫婦以外ん他人が詮索することが下品やて言いよー(夫婦以外の他人が詮索することが下品だと言っている)」【博】
「そりゃわかってるけどよー。太郎の様子を見てるとこう……気になるべさ」【神】
「どういう理屈じゃん?(どういう理屈だよ)」【長】
「この1000年ほど修行に仕事に家事に邁進してクールな奴ってイメージだったべ? なのに16年前あたりから急にひ弱になって喋り方も見た目も変わって、ついこの間からなんだか急に顔色もコロコロ変わるポンコツになりだして……目まぐるしいったらねえべ」【神】
「まあ確かに、あの変わりようには内心驚きましたが」
「そう。藍ちゃんが生まれて、出会っただけであの変わりようだべ? これで関係が深まっていったら今後どうなるか……もう楽しみで楽しみで」
「やはり下衆ばい(やはり下衆だな)」【博】
「お前も一回お嬢にボコボコにされちまえ」
「どっかの大天狗様と違って俺は藍ちゃんに油断も手加減もしねえべさ~」【神】
「誰の話だい?」
「お、僧正坊。治朗も……母君の手伝いはいいのか?」
「料理はもう終わりにするそうだ。酒ができたら持ってきて、こっちに混ざりたいそうだぞ」
「ところで……なんでさっきから方言なんだい?」
「楽しいから」
「ほう。ほんならもう一回聞くけど……いったいどちらさんの話をしてはったんかいな?(ならもう一度聞くが、いったい誰の話をしていたのかな?)」【京都弁】(以降、【京】)
「え、京都の有名な大天狗様のお話だべ?」【神】
「白々しい……あんさんも一回あの鉄拳喰ろたらええねん(しらじらしい……貴様も一度あの鉄拳を喰らうといい)」【京】
「手合わせならうんめろ(何回も)してるべ。ちなみに俺の方が勝ち越してるべさ」【神】
「当り前や。何年修行しとー(当り前だ。何年修行している)」【博】
「人間だった頃も含めたら……数え切れねえべ」【神】
「あんまり油断しとると次こそやられんで。藍は負けず嫌いやからな(あまり油断していると次こそやられるぞ。藍は負けず嫌いだからな)」【近江弁】(以降、【近】)
「……さもありなん。体育祭で最下位からスタートしたいうのにゴボウ抜きして、1位でゴールしてもうたくらいやしな(最下位からスタートしたというのにゴボウ抜きし、1位でゴールしてしまったぐらいだしな)」【京】
「……どこかのお山の跡取りが、そんな感じの負けず嫌いだったな」
「三郎、誰のことや?(誰のことだ?)」
「あれ? 治朗自覚ねえのか?」
「言うとくけどな、藍のあの性格は俺のせいちゃうぞ。あいつは昔っから俺の言うことなんかひとっつも聞かへんかったんや(言っておくが、藍のあの性格は俺のせいじゃない。あいつは昔から、俺の言うことなど聞いた例がない)」【近】
「そんな頭ごなしな言い方するけん反発されるんじゃろう(そんな頭ごなしな言い方をするから反発されるのでしょう)」【伊】
「そうや。藍はむしろファザーコンプレックスやて思うばってん(そうだ。藍はむしろファザーコンプレックスだと思うが)」【博】
「この場合、ファザーコンプレックスいうよりも(て言うよりも)、治朗コンプレックスやな」【京】
「略してジロコンだべ!」【神】
「なるほどジロコンか……言い得て妙だな」【長】
「じ、ジロコン……!! 誰がジロコンや!」【近】
「いや、ジロコンなんな治朗じゃなく藍や(いや、ジロコンなのは治朗ではなく藍だ)」【博】
「ぶ、豊前まで……!」
「あらあら、なあに? 『ジロコン』?」
「おお、母君! どうぞこちらへ!」
「ジロコンてのは~治朗コンプレックスの略で~」
「そ、その話はもういい! 母御前、俺のことはいいのです。話をするなら僧正坊の話をしてやりましょう」
「僧正坊さん?」
「なっ!? 何を言い出すんや、治朗!?」【京】
「皆も聞きたいだろう。この僧正坊が学校でどのような生活を送っているか」
「……まぁ話してくれるんなら聞きたいけど……」
「人身御供とはこのことぞなもし(人身御供とはこのことですね)」【伊】
「や、やめんか(や、やめないか)治朗! ようもそんな無茶な方向転換を……!」【京】
「ふっ、僧正坊……俺は知っているぞ。学校では、俺たちに見せているのとは違うもう一つの仮面をかぶっていることを……!」
「うふふ、そうみたいね」
「へぇ~聞きたい聞きたい。母君、どういうことなんですか?」
「それはね……」
「聞かんでよろし!(聞かなくていい!) 話さなくてよろしいです!(話さなくていいのです!)」【京】
「まあ、僧正坊さん。どうして京都弁なの?」
「僧正坊、諦めなさい」
「俺たちは皆、聞く体制になっている」
「い、いつの間にか方言もやめて……貴様ら覚えておけ……!」
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