第一話 天狗様、天敵(?)と相対す

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 法起坊さんが再び大きな拍手を贈ってくれた。  照れ臭いような、恥ずかしいような……。 「今までが平均20点を超えていなかったんだ……素晴らしいぞ、藍……!」  こっちは涙ぐむ治朗くん。うん、こっちはさすがに恥ずかしい。  ていうか、いらん情報を出さないでほしい。 「いえ、皆様のお力添えのおかげです。本当に、ありがとうございます」  そう言って、その場の皆さんに頭を下げた。  心から感謝してる。それは本当だ。  だけど、心から喜べない。というか、複雑だ……。  何故なら、私の成績アップの発起人である太郎さんは、このほど全科目でなんと0点をお取りになって、見事、全教科追試に相成ったのだ……。 「ぷぷぷ……太郎だっせー。あれだけ『僕のお嫁さんの危機を救って』とか言ってたのによ。自分がピンチに陥ってんじゃん。ぶっははははは!」 「せ、セイ……そんなに笑うと……く、ふふふ……」  笑うのはひどいけど……私も最初は耳を疑った。一番驚いていたのは本人だったけど。  しかも蓋を開けてみれば、なんとも間の抜ける話で…… 「ま、笑われても仕方ねーな。なんたって、”名前の書き忘れ”で全教科0点じゃな」  三郎さんの言葉で、火がついたように爆笑が起こった。お酒も入って少々陽気になっているのもあって、ご近所中に響きそうな大声だった……。
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