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第四話 天狗様、協力を要請す
セミの声が、あちらこちらで響き渡る季節。中天の太陽が道行く人を、家々を、焼き尽くさんばかりにじりじりと照らす中、彼らは六畳一間に密集していた。
山南家の離れだ。キッチンと風呂はなく、トイレと居間、六畳の個室が4部屋ある。現在は太郎、治朗、僧正坊の三人が居室として使っている。ちなみに、エアコンはない。治朗がいらないと言ったせいだ。
その中の一部屋……太郎の部屋に、大天狗たち9人が勢揃いしていた。
外気温と湿気で室内は蒸し風呂の様相を呈していた。
全員が、ダラダラダラダラ汗だくになって顔を突き合わせている。
「……と、いうわけなんだ」
太郎は先日の約束通り、他の大天狗たちにすべての秘密を打ち明けた。
あれから全員が一同に会する機会ができず、こうして話すことができるまで数週間が経ってしまった。
明日からはもう、夏休みが始まる。
それとともに、藍の誕生日も近づいていた。
太郎の告白を聞き届けた一同は、苦い表情を堪えきれなかった。
互いにしばし視線を交わし合い、代表するかのように、三郎が口火を切った。
「とりあえず、エアコンついてる居間でもう一度話さないか?」
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