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「ああん、もったいない!」
通学路の途中、花崎先生からのメールを見た私は、一人ごちた。
あんなにバッチリ撮れてたのに、消しちゃったなんて、もぉ。
私にとっては永久保存モノだ。
あの時の先生、かわいかったなぁ。
まさか顔を赤くするなんて。
そんな姿は想像したこともなかったよ。
一緒にご飯もつつき合ったし、それに、先生の手・・・。
私は自分の手を眺めた。
今でもまだハッキリ覚えてる。
あの暖かさ、指の太さ、手のひらのたくましさ。
思い出すだけで、また鼓動が早くなる。
頭がボーっとして、油断すると足が止まってしまう程だ。
ああ、あの手。
あの優しい手で、私の左腕に触れてくれたんだね。
あの大きな手で、私の頭を撫でてくれたんだね。
あの暖かい手で、サヨナラに絶望する私を抱きしめてくれたんだね。
・・・ふと、先生が転任の予定を打ち明けた日のことを思い出す。
ねぇ。
もしもあの時、ワガママを言っていたらどうなったろう。
行っちゃやだって、寂しいって、困らせてやったらどうなっただろう。
先生がいなくなるなら死んでやるって。
いや、ないな。
ない、ありえない。
先生が困るなんて、絶対にないよ。
私といつも真っ直ぐに向き合っていた先生。
その時はいつだって、胸を張って私を支えてくれていた。
彼に限って、手に負えなくなるなんてことは絶対にないんだ。
だからこそあの文化祭での姿は、文字通り想像を絶する可愛さを見せられたんだ。
そう、先生は困らない。
あの時私が望めば、きっとなんだって簡単に叶えてくれただろう。
「キス、してください。」
もしもそう言ったなら、きっと迷いなく。
最後なのだから、どんなワガママでも、今だけは・・・
目を閉じると、先生はそっと私の顎を引く。
あの大きな両手が、やがて私の両頬を包むんだ。
それから、カサカサした唇・・・。
ポマードとおじさんの匂い。
吸い付いた肌が弾む音。
絡みつく熱い舌。
香る生ぬるい吐息。
あまい唾液。
先生は私の口の中を撫でていく。
そして、私はさらに調子に乗って、
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