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「お、アマネ、ちーっす。」
「す!
す、すす、杉田さん!?
お、おはよッ!」
「・・・どったの?」
ああああああ、びっくりしたぁ。
校門の辺りでばったり出会った彼女に、心臓を掴まれたような気分になる。
えと、平気だよね?
私、今のこと声に出してなかったよね?
てゆうか珍しいね、あなたが私より早いなんて。
「有田が探してたよ。
アタシら先に片付け始めてっから、行ってこいよ。」
「あ、うん。
ありがとう。」
有田先生、またか。
いつも私だけを呼ぶんだよね。
吉良くんじゃダメなのかな。
・・・でも、今の私には少しだけありがたかった。
杉田さんとは、ちょっと気まずい。
いや、今の妄想でまだ気が動転してるとかじゃなくてね?
私、打ち上げには行けなかった。
せっかくのお誘いを結局ふいにしちゃったのが、私の中でまだつっかかってる。
それが申し訳なくて、私は逃げるようにそそくさと立ち去った。
「天根、コレ。」
「なんですか?」
「文化祭を振り返って、思ったことをまとめてくれ。
提出は今日中にな。」
「え?
随分と急ですね、今日中って。」
「おう、よろしく。」
「・・・どうせ昨日渡し忘れたんでしょ。」
「・・・。」
私にプリントを押し付けると、有田先生は気まずそうに早足で去っていく。
苦情を聞く気は一切ない様子。
それどころか、労いの言葉ひとつかけてくれないんだね。
まあ、あの人に期待する方が間違ってるんだけど。
「でも、コレで学級委員の仕事も終わりか。」
そうだ、終わり。
コレで最後なんだ。
そう思うと、
ふと虚しくなった。
・・・みんな、終わってしまったことだ。
今日これからの片付けをしてしまえば、ここはただの学校に戻ってしまう。
花崎先生のいない、つまらない学校に。
学級委員として仕事に追われることもないけれど、私の生活は家と学校を往復するだけになるんだ。
「これから私、何を楽しみにしていけばいいんだろ。」
先生に会える。
それだけを楽しみに生きてきたけど、文化祭は終わってしまった。
これからは無駄に時間が余る。
学校に残ってもしょうがないし、家事もないのに家にいたって息苦しい。
もちろん遊びに行くようなお金もない。
忙しさで忘れていたけれど、私の毎日ってすごくつまらないんだよね。
また河原で石を投げて過ごすしかないのかな・・・。
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