ゴミ人間

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 満員電車に乗って、駅からは人だらけの通学路。男子は学生服の黒、女子はブレザーの紺。頭はみんな真っ黒。人混みは個人の集合ではなく、それ自体が一つの塊だ。  いつも通る公園横の路上に人が倒れている。カーキ色の長袖にグレーのGパン。隣の駅でよく見かける酔っ払いやホームレスの人とは違う。なのに誰も何もしようとはしない。普通「大丈夫ですか」って話しかけたり、救急車呼んだりするんじゃないの。  そう思いながらわたしも人波に流され通りすぎようとした。だってみんなが素通りしているのにわたしだけ立ち止まったりしたら、「へー、ありさってやさしいんだね」なんて全然優しくない言葉と視線を投げかけられるに決まってるから。  だけど無理じゃん。この人、頭の周りの地面に黒い染みが広がってて、髪の毛が固まってる。これってどう見てもやばいやつでしょ。  わたしは一旦通りすぎて、すぐに忘れ物をした風を装って駅に戻った。実際は駅まで行かず、同じ電車から降りた集団が通りすぎるのを逆走して、最後尾から十メートルほど距離をとり、ゆっくり歩いた。
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