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怖がるどころかうんうんと嬉しそうに頷きながら話す。「可愛かったーなー、どことなく橋本環奈に似てたんだよなー」などと独り言のように呟いていたが、急に真面目な顔で僕を見た。
「でも幽霊を金儲けや話題作りに使うのはやめておけ。悪いことは言わん。祟られてからじゃ遅いぞ」
てっきり眼鏡を返せだとか、動画の収益を分けろとか言われると思っていたが、先輩は本気で僕を心配している様子だった。いたたまれずグレープフルーツサワーを半分ほど一気に飲んだ。
「この眼鏡、返さなくていいんですか?」
僕はカバンの中から眼鏡を取り出してかけた。いつのまにか先輩の頭上の数字が五千を超えていた。
「それはもうお前にあげたもんだ。俺が持ってても仕方ないしな。ただ使い方に気をつけろよ……」
周囲の数字を確認するのに気を取られ、先輩の話は途中から聞いていなかった。悪いとは思うが動画投稿の職業病のようなもので習慣になってしまっているから仕方がない。会社から近いということもあってか二桁を超える人が数人見受けられた。「0」がいないことを確認して先輩の方へと向き直る。
「いたか? この中に」
偉そうに説教してからわずか三分と経たずに、身を乗り出し興味津々に尋ねる先輩に心の底から深いため息がこぼれた。
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