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気持ちいいくらいに泥酔した先輩をタクシーに乗せ、まだ終電に間に合う僕は駅へと小走りで向かった。地下鉄から渋谷駅で京王線に乗り換える。連絡通路からスクランブル交差点を横目に見たとき、居酒屋からずっと眼鏡をかけたままだったことに気づいた。
ふと足を止め、見下ろす。終電近い時間だというのにハチ公像前はたむろする若者でごった返していた。その中にゆっくりと移動する「0」の数字を見つけた。遠目からでも僕が初めて見つけた霊であることは間違いなかった。僕は階段を駆け下り、少女の霊を目指した。居酒屋で先輩が見たと言っていた「橋本環奈に似た女の霊」と同一人物ではないか? 眼鏡をかけた僕が最初に見つけたのが彼女だというのは単なる偶然なんだろうか? それを確かめたくて走り出していた。人にぶつかりそうになりながらも彼女の前に辿り着き、行く手を阻むように両手を広げた。我ながら狂気の沙汰だと思う。シラフならば絶対にやっていない常軌を逸した行動だった。
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