第1話

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 辛うじて意識は少しあった。 そんな中考えたことがあった。  『死にたくない』  先程までは生きる気力すらなかった。しかし、俺の心の隅にはまだ生きたいという願望があったのだ。仔ネコさんはいまどうしているだろうか…。人気になってライブとか沢山しているのだろうか…。昔見た、たった1度見たあの動画の歌が死にかけの俺の心を動かした。  「…ま、だぁ……死に、たく、な…い」  俺の持つ残り僅かな力で、リビングを出て廊下に這い蹲る。あと少し。あと少しで玄関のドアに手が届く。やっとの思いでドアに手を掛け、外へ飛び出る。流れる血が止まらない。  「おい!大丈夫か!!おい!!しっかりしろ!!!」  通りすがりの男性の声が頭に響く。だが、そんな彼の声もだんだん遠くなっていく。  「誰か!!救急車!!!」  体がだんだん衰退していくのがわかる。ああ。俺死ぬのか。もう疲れた…。彼のその声が俺に聞こえた最後の声だった。そこで俺は意識を手放した。  俺は闇から抜け出せたのだろうか。いや、俺の体に一生こびり付いて、忘れられる日など来ないだろう。  15歳最後の夏の日。その日は、雷が激しい大雨の日だった。
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