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桜木先生は生徒を叱り終えると、扉を開けて廊下に出てきた。周平が話しかけようか迷っていると、桜木先生がふと、こちらを振り返った。
「あら、青木先生。どう?教師の仕事は」
桜木先生は、周平を見上げながらそう言った。周平はその質問に答える代わりに、質問を返した。
「桜木先生、僕のこと覚えてますか?」
「ええ、もちろん。山で遊ぶのが大好きだったわね」
周平は先生との再会を喜ぶとともに、少し妙に思った。この先生はもう少し生徒に厳しくて、怖い先生だった。現にさっきも、生徒を感情的に叱りつけていた。
ところが今の先生には、そういう堅物な感じは一切感じとれない。あの性格は生徒の前だけのものだったのだろうか。
周平がそう考えていると、先生は笑顔のまま言った。
「青木君はもう先生なんだから、そんなに怖がらなくてもいいじゃない」
周平は少し驚いて、先生の顔を見た。
「怖い先生だったでしょ、わたし」
「まあ、ええ。どちらかと言えば、そうでした」
思わずそう言うと、先生はくすりと笑って、「そうよね」と呟いた。
「職員室に行くんでしょう?」
先生はそう言って、ゆっくりと廊下を進んでいく。次に話す話題を考えていた周平は我に返ると、言われるがまま先生について行った。
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