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「あなたたち、本当に仲が良かったわよね」
周平は少し考えてから、あなたたちというのが、あの頃の三人組のことを言っているのだと気がついた。そしてそれと同時に、少し意外な気もした。
周平たちは数少ないクラスメートの中でも、比較的目立たないタイプだったからだ。それに、先生とは特に仲が良かったわけでもない。なのに、そんな自分の交友関係まで覚えていてくれていたのか。
「山が閉鎖されかけたことがあったわね。それで、山を放課後の遊び場として使っていた子たちは、大騒ぎして」
先生は、どこか楽しげな口調で続ける。
「そのときに中心になってたのが、いつもは大人しいあなたたちだった。あのときはびっくりしたわね」
周平はその昔話を聞きながら、ふと、あることを聞いてみたくなった。
「桜木先生は、山が閉鎖されるのは、賛成だったんですか?」
周平は言った。それは昔から疑問に思っていたことだった。
周平たちの山通いが目撃されてからというもの、先生たちは皆、危ないから山には行かないようにという話を、ホームルームや集会などで何度も口にしていた。
ところが、普段は口うるさい桜木先生だけが、山に関する注意を一切しなかったのだ。
周平が質問すると、先生は、驚いたような顔をこちらに向けた。
「わたしは、反対だった。なぜだか分かる?」
周平は小さく首を振る。それを見た先生は少し考え込むような様子で、「そう」とだけ言った。
そんな話をしている間に、周平と桜木先生は職員室を前にしていた。先生は躊躇いなく扉を開けて、中に入っていく。周平もそれに続いて、恐る恐るそこへ足を踏み入れた。職員室という場所には、未だに慣れることが出来ない。
「四時から職員会議があるから、そこでまた話しましょう」
先生はそう言って、部屋の一番奥にある座席へと歩いていった。
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