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玄関のドアに鍵をかけてガチャガチャとして確認してから運転席に座ってハンドルを握った。
8月13日青い空に夏の白い雲が緑の山の上にかかっているのになぜか頭の上の方には真っ黒な雲が覆い被さり今にも雨が降り出しそうな、なんだかいやな天気だったのを今でもはっきりと覚えている。近ずきつつある台風が連れて来たその真っ黒な雲は雨と雷をはらみ今か今かと放出することを我慢しているように見えた。黄色い稲光りがあちこちで見えた。
( もしも雷が鳴っても車の中は安全だから大丈夫。)
と、富士子は自分の心に言い聞かせた。朝の9時過ぎだというのに気温は30度を超えていて早くエンジンをかけてエアコンをつけなくては子供たちが危ないと思い急いでエンジンをかけた。
ブワーっと暑い風が吹き出し富士子は後部座席の子供達を見た。
なぜだかわからないけれども、本当になぜかわからないんだけれど、その時富士子は、
「 全員乗りましたかー?」
と、明るく声に出して言った。
そんな事は初めてで後にも先にもそれきりだったけれども、確かに富士子はそう言ったんだ。
不気味に自分達の頭の上に広がる黒い雲を何でもない事だと思いたいと思ったのか自分でも不思議な違和感を感じて、
( なんで全員乗りましたかなんて言ったんだろう?)
と、自分で自分を不思議に思って子供たちを見つめると2人は見つめ合っている。
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