第3話 心配

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第3話 心配

 翌朝、目覚めるとすでに瑠衣の姿はなかった。綺麗に布団が折り畳まれたベッドを見ながら、どこで朝食をとっているのだろうと思う。テーブルにはタブレットが残されたままだ。瑠衣はあの画像を見て何を思っただろうか。理亜とあの画像がどう繋がるのか、思い当たることは本当になかったのだろうか。  今日、瑠衣が帰ってきたらもう一度聞いてみよう。そんなことを思いながら音羽は学校へ向かった。  特に面白くもない授業を聞くでもなく聞きながら音羽は考える。  ――どうして理亜はあたしに連絡してきたんだろう。  たしかにルームメイトでそれなりに仲が良かった。しかしクラスは違ったし、趣味も同じとは言えなかった。どちらかというと地味で目立たないグループに属する音羽とは真逆で、理亜はキラキラしていて目立つ上位グループ。音羽にとっては憧れであったが、理亜にとって音羽はただのルームメイト。それだけだったはずだ。  偶然、タブレットを見つけて充電したからだろうか。いや、きっと偶然ではない。あれは理亜が残していたのだ。家族では見つけられない。けれど理亜の毎日の行動を見ていた音羽ならば見つけられるあの場所に。そして充電がされたことを確認すると、見つかる危険があるにもかかわらずタブレットを持ち出し、画像を撮って戻した。そしてパスコードを置いた。  タブレットの中を音羽に見せたかったのだろうか。あの記事や、どこかの街の風景を。  一体、なぜ……。  香澄美琴。彼女が何者なのか早く知りたい。  音羽は机の下でこっそりスマホの画面を確認する。理亜からの連絡は何もない。そもそも彼女は音羽のスマホの番号を覚えているのだろうか。理亜が使っていたスマホは見つかっていないが、ずっと電源が入っていないと聞いた。ラインのIDだって、理亜が覚えているとは思えない。  ――また、連絡するから。  そう彼女は言っていた。 「どうやって……?」  口の中で呟いた言葉は教師が読み上げる意味がわからない英語によって掻き消された。
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