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「こんばんは」
送ってもらった夜以来、淳弥との距離は更に近くなった。とは言っても。
「あ、またシリアルだ。峰さん、好きですよね」
大容量の大袋のシリアルをバーコードに通しながら、夕希は言う。気安い態度に、淳弥は苦笑いしながら答えた。
「うん。…パン焼くのも、めんどくさいって言うか、時間ない朝ってない?」
そんなの毎朝だ。仕事明けの朝は特に、食欲<睡眠欲だから。
「…ああ、あります」
妙な共感を覚えて納得のため息を漏らしてしまう夕希だった。
ということは、淳弥はひとり暮らしなのだろうか。確かに、買っていくものも食材そのものではなく、値引きになったお弁当とか、レトルトのカレーとか、冷凍食品とか、すぐに食べられるものが多い。
人のことは言えないが、栄養バランスは大丈夫なのだろうか…。
(いや、まあ、私に関係ないけど)
踏み込み過ぎた想像を、夕希は購入品と会計が映しだされたモニター画面を見て、振り払う。あくまでも客と店員の関係だ。貰った名刺も、引き出しの奥に仕舞い込んだまま。
「あ、このシリアルバーだけ袋別にしてください」
淳弥に言われて、夕希はそのとおりにする。会計を終えて、カゴを持ち去ろうとする時、淳弥が言った。
「これ、カウンターの人に預けておくから、あとで食べてね、いとちゃん。俺から差し入れ」
「え…」
驚いて絶句して、夕希が遠慮して断ろうと思った時には、もう淳弥はカゴごとサッカー台と呼ばれる商品を詰める場所に移動してる。すぐに次の客が来てしまい、夕希はそちらを優先しなくてはならなくなる。
(…もう)
ちょっと困る。だけど嬉しい。責任者の高田にからかわれつつ、夕希は淳弥からの差し入れを受け取った。
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