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「糸井サン、彼氏でも出来た?」
今も、教室でスマホをイジってたら、通り過ぎ様、琢朗に聞かれて、慌てて夕希はスマホを隠した。
「な、何で?」
「ん~、最近、よくスマホ弄ってるから。前は、暇さえあれば教科書か法律書読んでたのに」
伊達に弁護士目指してない。琢朗は鋭すぎる洞察を披露しながら、夕希の隣に後ろの席に陣取る。
「余裕だね、司法試験まであと1年ないってのに」
「ち、違うもんっ。彼氏とかじゃなくって」
「じゃなくて?」
「…知り合いって言うか、ライン友達?」
現状、お互い好意は持っているのだろうと思う。けれど、ふたりきりで出かけたり、付き合うって言われたり、一歩踏み込んだ関係にならない。夕希も恋には消極的な方だが、少しずつ、この状況がじれったく思えてはいる。
「…ねえ、上条くん」
「何」
「上条くんは、毎日ラインしたりする異性の友達っている?」
夕希の質問に、琢朗は意外そうに眉を上げる。それから、司法にまつわること以外の全ての質問は愚問だとでも言いたげに、ふっと鼻で笑って口元を歪める。
「俺がそんな時間の浪費してると思うの?」
「……」
琢朗にこの手の相談を持ちかけた自分が浅はかだった、と夕希は心底後悔した。
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