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「駅前のスーパーの深夜のレジの子だあ、って気がついたの1ヶ月くらい前かな? あんな夜遅くまで働いて、朝はまたこんな時間に出て行くんだね、タフだよね」
「いや、そんな…」
淳弥の話に、夕希はますます肩を縮こまらせた。うー、恥ずかしい…。
「俺、会社の移動でこの街に来て半年くらいになるんだけど。未だに同じアパートの人とも、ろくに顔あわさないし、他につながりもないし。だから、毎朝毎晩夕希ちゃん見ると、頑張ってるんだなあ…って、感心して。そんで、俺も頑張ろう、って勝手に思ってたんだ」
「……」
(私をそんな風に見ててくれた人がいるなんて…)
司法試験まではあと1年を切っていて。同級生はとっくに働いてるのに、未だに仕送りをしてくれてる地元の両親への気兼ね。寝る間も惜しんで勉強とバイトに明け暮れても、全て徒労に終わるのではないかという不安、プレッシャー
出口の見えない迷路を歩いていた夕希には、淳弥の言葉で自分のこれまでの頑張りが報われたように思えた。
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