2話

1/1
前へ
/5ページ
次へ

2話

アリスが意識を取り戻した頃には、 自室である檻に戻されていた。 「....ッ」 見慣れた、薄く大きい布に包まれ、 眠っていたようだ。 自体が把握出来たのか アリスは、体育座りになり両手で頭を抱える。 (また、人を殺してしまった。) アリスに意識がない間、 別の人格が体を操っているのかどうか知らないが いつの間にか人を殺しているのだ。 アリスは、 生まれた頃から話し言葉は教えて貰えず、 人を殺す方法と主従関係を躾られている。 つまり、彼女の持ち主の仕事の道具なのだ。 人が普通持つ三大感情を持ったことがない。 嬉しい、悲しい、怒る。 アリスが持っているのは、 持ち主に対する恐怖のみ。 セレブ達が 怯える自分を見て、笑みを浮かべるのも 分からないのだ。 そっと、冷たい床に横たわり檻の奥を見つめる。 そこには、大きな扉があり あの扉を抜ければ逃げられるのか。 アリスは何度もそう思った。 でも、外の世界に出たら私は生きていけない気がする。 そうも思う。 持ち主の為に、人を殺す。 12歳になるアリスにとって、その行為が生きがいになっていると、自身で薄々気づいていた。 なんだかんだ、持ち主は 少ないが朝、昼、晩と、 飯は持ってきてくれるのだ。 恐怖はあるものの、もう体が持ち主から逃げれられないんだろうな と、小さいアリスは思った。 寝返りを打つと、チク、と腕に痛みが走る。 左腕に目をやると、爪痕から血が垂れていた。 記憶はないが、人を殺すときに 抵抗されてできた傷だと、確信した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加