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「なあ、なんで最近クラブこーへんの?」  お昼休み。  浅井君が、あたしの顔をのぞきこんだ。 「…ちょっと、放課後は忙しくて。」 「忙しい?何してるん。」 「あの…早く帰んなきゃいけないの。」 「文化祭は?」  浅井君の寂しそうな上目使いに、少しだけ胸が痛む。  丹野君とは、あれから気まずいまま。  クラスが離れてるから、あまり会うことはないけど。  それでもたまに顔合わすことがあっても、あたしは、丹野君の顔を見ないようにしてる。  …真音への気持ちと、自分のさらにダメな部分を再確認出来た…  それについては、丹野君に感謝しないといけないのだけど…  あの瞬間を思い出すと、今も胸が苦しくなるのは事実で。  そうすると、もう…条件反射と言うか…  丹野君の名前が出るだけで、息苦しく感じてしまう事もある。  こんな状態、どうにかしなきゃとは思うんだけど… 「なんか、あった?」 「え?」 「最近、廉も元気ないし。」 「……」 「るーの名前出したら、機嫌悪うなるし…」 「…あたしなんて、邪魔だと思ってたんじゃないかな、丹野君。」 「お、おいおい、んなことないって。」 「ううん、きっと思ってたのよ。だから…せいせいしてるはずよ?」 「るー、んなこと言うなや。」 「ごめん、あたし職員室行くから…」  言葉を出すたびに胸に痛みが走る。  何とかこの話題を終えたくて、あたしは立ち上がった。  浅井君に心の中で手を合わせながら、教室を出て小さくため息をついてると。 「なーに、ため息なんてついてんだ?」  宇野君と瀬崎君が、嬉しそうな顔してやってきた。 「…何かいいことでもあったの?」  あたしが問いかけると。 「あれ?るー、まだ情報入ってないのかよ。」  二人は嬉しそうな顔。 「…何?」 「ジャジャーン。」  瀬崎君が、一枚のチラシを広げて見せた。 「Deep Red First Album…え?」  あたしは、それを読んで、二人を見上げる。 「さっき音楽屋までひとっ走り行って予約してきたんだ。」 「そうなんだ……ついにデビューなのね。」  あたしはそのチラシを手に、感慨深い気持ちになっていた。  理解してあげられなかった真音の夢。  自分の気持ちを優先して、真音を待たないと宣言してしまった。 「少なからずとも、知り合いがスターだもんなー。」 「そのスターの彼女が同じクラスにいるって、すごいよなー。」  彼女じゃないのに。  そう言いたくても言えない、勝手なあたし。  自分では彼女じゃないって思ってるのに、この指輪は外せないなんて…。  廊下で三人でじゃれあってると。 「…俺は、のけもん?」  教室から顔をのぞかせた浅井君がそう言って。  あたしたちは、大爆笑してしまったのよ…。
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