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「えっ、また?」
宇野君が呆れた顔をした。
「…うん。」
あたしが頷くと
「よう我慢してるなあ。俺ならパンチの一発でもくらわしてるで。」
浅井君が右手を握り締めて言った。
「でも、あのDeep Redのマノンだもんなあ。忙しい人だし、仕方ないって言えば仕方ないんだよな。」
瀬崎君がそう言うと、二人は腕組みして『うーん』なんて唸ってる。
お昼休み。
あたし達は、いつものように図書室で密談中。
男三人、女一人。
普通なら、いじめの標的にされそうなシチュエーションなのかもしれないけど、なぜかあたし達は『仲良し四人組』なんて言われてしまってる。
それより何より…
あれだけ男の人が苦手だったのに。
あたし、今はこの三人としか一緒にいない。
…決して女友達がいないわけじゃな…
こうして密談に付き合ってくれそうな人は…いないかも…
今でもあたしの相談役のトップは、頼子だ。
そして、その頼子と親友関係だった宇野君と瀬崎君は、後は引き受けた!!と言わんばかりに…あたしを気遣ってくれる。
「あたし、ちょっと贅沢になっちゃってるのかも…」
小さくそう言うと
「全然贅沢なんかやないやん。それが普通やって。付き合うてるのに何も望まん方がおかしいやん?」
浅井君は唇を尖らせた。
「でもまあ、来週にはクリスマスってイベントもあるし。」
瀬崎君が明るい声で言ってくれたけど…
「あるけど、会えないかもしれないし…」
あたしは、うつむいてしまった。
クリスマスの予定…本当は、真音から誘って欲しいのに。
真音はきっと…バンドの事で頭がいっぱいで。
女の子がその日を特別に思ってる事なんて、気付いてないと思う。
でもなあ…
あたしも、自分から誘って…また断られたら…って。
それも、クリスマスを。
…心折れちゃうよ…
「プ、プレゼントとか、考えた?」
「ううん…何も浮かばなくて。」
彼氏が出来て、初めてのクリスマス…
本当なら、もっと…ウキウキしていいはずなのに。
映画デートを五回もキャンセルされてるあたしは…
……ウキウキなんて、出来ないよ~……
「……」
「……」
ふと気付くと、あたしの暗い表情に、みんなが黙ってしまってた。
「あ…あ、ごめん。そうー、ね。プレゼント、考えてみる。」
とりあえず笑ってみせると
「ま、物やなくてもええ思うけどな。」
って浅井君が言って
「何?」
あたしが聞き返すと
「そりゃあ、から」
「何でもないよ~。」
宇野君と瀬崎君は、浅井君の口を押さえて苦笑いした。
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