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「るー。」  二学期が始まって10日。  リビングでボンヤリしてると、ママがあたしを呼んだ。 「何?」 「来週の土曜、何か予定ある?」 「来週の土曜?土曜日って、えーと…」 「17日。」 「……」  真音の誕生日。 「何か予定ある?」 「あ、ううん。何もないよ。」 「食事でも行かない?」 「うん。久しぶりだね。」 「今度は、ちゃんと予定を聞いてからと思って。」 「ふふっ。ありがと。楽しみ。」 「るーの進路について、ちょっとね。」 「あああああ……その事…」  あたしは額に手を当てる。  二学期になって進路希望用紙が配られたものの、あたしはまだ書き込めずにいる。 「パパは講演で大阪に行ってるから、ママと二人で。」 「いいの?パパにバレたらすねちゃうよ?」 「いいの、いいの。パパもそろそろ娘離れしなくちゃね。」  ママはそっとピアノを開くと 「ママ、嬉しかったな。るーがバイオリン弾いてくれたの。」  って、椅子に座った。 「弾いた…って、ハードロックだよ?」 「それでも。るーが音楽に興味を持ってくれたのが嬉しいのよ。」  ママの指は『エチュード』を奏でてる。 「…懐かしい曲だね。」  小さい頃、おじいちゃまに叩き込まれた曲。 「まだ弾ける?」 「どうかな。ちょっとやってみようかな。」  あたしが立ち上がると、ママは 「弾いてくれるの?」  って目を丸くした。 「バイオリン、とってくるね。」  あたしは階段を駆け上がる。  ママ、驚いてたな。  そうよね…ママと合わせた事なんて一度もないもの。  バイオリンをケースから出す。  何だか、少し照れくさい。  そんな事を思いながら、あたしはリビングへ。  ママはピアノの前で。 「緊張してきちゃった。」  って笑ってる。  あたしはママの横に立つと 「じゃ、いくよ。」  そっと、バイオリンを持ち上げた。
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