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「…あ。」
神様は、なんて意地悪なんだろう。
浅井君と涼ちゃんの交際は、色々もめたりしたけれど…
二人は、なんとも微笑ましいカップルになって。
羨ましいな…って思う事もあるけど…誰かの幸せって、やっぱりいい。
丹野君とは気まずいまま。
真音からは先週、三ヶ月ぶりに短い手紙があった。
ツアーに出る。
その報告。
…また長く連絡ないんだろうな。
でも大丈夫…大丈夫よね…。
そう自分で自分に言い聞かせて。
新しい気持ちで、高校三年生を向かえようと。
初めてのクラス替え。
新しい教室に入ると、隣の席に丹野君。
今年は、宇野君も瀬崎君も浅井君も離れてしまった。
「……」
気まずくて、無言で席につくと
「…おっす。」
丹野君が、低い声で言った。
「…おはよ。」
「……」
「……」
…ああ…気まずいよ…
昔からずっと口下手なあたしのせいで小さな誤解があったとしても…頼子が間に入ってくれたりして…
…あたし…いつも誰かに助けられてきた。
…ダメだ。
これじゃ。
あたし、変わるってずっと言い続けて来たのに。
意を決して丹野君に話しかけようとすると。
「…なあ、仲直りしようぜ。」
突然、丹野君がイスをあたしの方に向けてキッパリ。
「……」
あたしが言おうとした事を丹野君に言われて…無言で見つめてると
「俺が悪かった。正直ヤキモチとかもあってさ。なんか、みんな彼女だの彼氏だの言ってさ。俺だけ、なあんにもないんだもんな。」
少し、おどけた口調。
「……」
「だからって、おまえにあたることないんだけど…気ぃ許せるから…」
「……」
…気が許せる?
あたしが?
その言葉にキョトンとすると、丹野君は少しだけホッとした表情になった。
「いい加減機嫌なおしてくれよー。もう半年以上経つんだぜ?部室でも、俺、針のむしろ状態で居心地わりいんだよ。」
…内心、嬉しい。
本当は丹野君としゃべれる日がくればいいって思ってたし。
だけど、丹野君って黙ってると怒ってるみたいな顔で話しかけにくかったし…
クラス替え…同じクラスになれて、良かった…。
「ごめん…」
あたしが小さく言うと
「え?」
丹野君は、眉間にしわ。
「今のごめんって、仲直りできない…の、ごめん?」
「そ…そうじゃなくて。あたしも、ずっと切り出せなくて…」
あたしがうつむいてそう言うと
「…許してくれる?」
「ゆ…許すも何も…あたしも…ごめん…」
「……はああああああー……良かった…」
丹野君は、机に突っ伏して。
「全然キッカケがねえから、クラス替えで一緒んなりますようにって毎晩お祈りしてたんだー。」
「あははは、すごいね。なっちゃった。」
「…笑った顔も、久しぶり。」
「……」
一瞬…真顔になった丹野君に、ドキッとした。
…丹野君って、こんな顔もするんだ…って…。
「ラッキー。一ヶ月は隣だ。」
丹野君はイスを元に戻すと。
「毎日ちょっかい出してやっからな。」
って、意地悪っぽい目で笑ったのよ…。
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