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高田の人生
高田は十九歳で学生結婚、翌年には子宝に恵まれた。
同級生からは「早撃ち」とひやかされたが、高田は所帯を持ったことを誇らしげに語っていた。
「子供は、日を追うごとにかわいくなるんだ。成長を見守る家内も笑顔が美しくなっていく」
おおげさだと笑う連中に、高田は微笑んだ。
「君たちも、家庭を持てばわかることさ」
私たちの知らないことを、高田は知っている。
彼は人より先を歩いていた。
同い年の私たちは、彼と同じところにはいない。共感はされなくても、彼はひたすら歩いていく。
歩きすぎてしまった。
高田は四十歳で、妻を失った。
「もうひとり子供が欲しい、まだ諦めていない」
彼の口癖だった。
高田の妻は、願いを叶えた。
命をかけて、叶えてくれた。
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