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「來未、無理するな」
「はーい」
結婚式を終え、1年が過ぎるころ。
ベランダで洗濯物を干す私のお腹には、新しい命が宿っている。
パンパンとよく皺を伸ばして
干し終わった洗濯物は、お日様の光の中、はためいてーー
「いい風が吹くなあ」
額の汗を左手の甲で拭う。
左手の甲の黒い痣を見つめる。
ーー何か。
大事なことがあった…
「來未?大丈夫か」
優人が窓から顔を出す。
「うん」
にこっと笑うと、にこっと笑う。優人はそんな暖かい人だ。
彼と結婚出来て、幸せだ。
ーー何か。
一瞬、脳裏に何かがよぎった。
…わからない。
「お茶淹れるぞ」
「うん、ありがとう」
私は洗濯物をもう一度見て、空を見てーー
何故か空に向かって笑って…家の中に入った。
【終わり】
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