応援して。全部叶えるから。

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 そこにはたくさんのひまわりと、小さく笑顔の少年が描かれていた。 「これはけーぞー。」  かなみは絵の一部を指さした。 「えっ?」  ぱっと見はただのひまわり畑の絵だった。よく見なければ人が描かれていることは分からない。 「画家ってさ、自分の絵に自分のサインを入れるでしょ?」 「まあ、そうかな。」  あまり絵のことは詳しくないので適当に受け流した。かなみはそんなこと気にせず話を続ける。 「かなみはサインの代わりに、けーぞーを入れることにしたの。」  かなみの表情は真剣そのものだった。 「なにそれ。なんで?」 「かなみの絵はかなみだけでは完成しないから。このひまわりだってけーぞーがひまわり畑に連れて行ってくれなきゃ描けなかったもん。」  かなみのその言葉はなんだか恥ずかしくて、でもとても嬉しくて、平沢は思わず笑顔になったのだった。       *  平沢とかなみは電車を降りて数分、木々が生い茂っている公園の中を歩いていた。 「ねえ、どこ行くの。」 「ここ。」  平沢は左手に見えた白い二階建ての建物を指さした。 「ここって……。」 「美術館だよ。」 「一度、来たことあるよね。」 「覚えてたんだ。」 「覚えてるよ。」 「じゃあ、行こうか。今、ちょうど有名な画家さんの展示会をやっているはずだから。あっチケットはネットで昨日買っておいた。」  かなみが質問する間もなく、平沢はかなみを連れて美術館に入った。  平沢の言う通り、教科書に載っているような、誰もが知る画家の美術展が開催されていた。かなみは一つ一つの絵を時間をかけてじっくりと見た。  かなみは絵が好きだ。小さい頃から見るのも描くのも大好きだった。  平沢は絵よりもかなみの反応ばかりが気になった。真剣に絵を見つめるかなみを見て、なんだか安心した。
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