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ちょうどいいタイミングで薫が帰宅し
階段を上がってくるのが分かった。
バイオリンケースを下げてるから薫お兄様はすぐ分かる。
そして上の2人にはないそこはかとなく陰鬱な気配とね。
「薫お兄様」
僕の部屋の前を通りかかるちょうどその時
ドアから顔を覗かせて呼び止めた。
「ねえ、ちょっとお願いがあるの」
「断る」
無論一筋縄じゃいかない。
「お願い」
「嫌だ。おまえに関わると碌なことがないって身に染みて分かった」
警戒して当然だ。
僕のちょっとした好奇心と過ちのせいで廃人になりかけた後だもの。
でも
歩み去ろうとする足を止めさせるには
「もう無理矢理僕を抱かせたりしませんから」
「おまえっ……!」
「おっと、これ以上無駄口は叩かないから――お願い」
逆手を取った悪戯な挑発。
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