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「何だよ、それ」
さすがに薫も多少の事じゃ動じなくなってきた。
その代わり大きなため息を吐きその場で踵を返す。
「違うよ、もう。これでね、朝まで解けないよう僕を縛って欲しいんだ」
「え?」
「知ってるでしょ。薫お兄様は——僕が夜な夜な青虫みたいに庭の花を食べちゃうこと」
「ああ」
少し考えて薫はまたこちらを振り向いた。
もともと人が良くて優しいんだ。
「困ってるんだよ、正直……怖い」
「分かってるだろうが俺は医者じゃないぜ」
僕が白状するとベッドの足元まで来て仕方なしに腰を下ろした。
「おまえの恋人でもなきゃ世話役でもない」
「でもこの秘密を唯一知ってる人」
僕はまだ固く握られた手に赤縄を押し付ける。
「それに――僕のお兄様でしょ」
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