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薫は案外手際よかった。
やはりバイオリン弾きだけあって手先が器用なのかもしれない。
「これで本当に眠れるのか?」
頭の上で腕をひとくくりにベッドヘッドに縛る。
「もっときつくていいよ。慣れてるから」
「それ以上言わなくていい」
からかって笑うと白い耳たぶがほのかに赤くなるのが可愛い。
「なあ、なんであいつらに秘密にするんだ?」
あいつらとはもちろん征司と九条さんの事だ。
「だって……寝てたら無意識に庭に出て花を食べに出ちゃうんだよ。そんなのかっこ悪いしいやだ」
「そんな問題かよ」
「だってさ、精神的に病んでて変な奴だって思われちゃう」
「俺の前でよく言うな」
「あ……」
怒ってるのわけじゃない。
薫は無言のまま僕の手首の結び目がきつ過ぎないかずっと見てる。
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