episode256 二重取りの愛

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「これで解けないとは思うが——逆に解きたい時、おまえどうすんだ?」 初めて人を縛り上げたのだろう。 薫は複雑な顔で己の指先を見ている。 「朝起きたら薫お兄様が解きに来て下さればいいんだよ」 僕は笑顔で答えた。 「お兄様――どうせそんなに長く眠らないでしょう?」 無垢な白い肌にバラ色の唇が咲いてる。 キスをせがみたいとこだけどそれは無理な相談だろう。 「分かった。電気を消すぞ。お休み」 薫はぶっきらぼうに答えて それでも僕の足元に毛布を掛けて行ってくれた。 「お休みなさい――」 足元が温かくなりざわついた心がようやく穏やかになった頃。 僕は緩やかに眠りへと落ちて行った。 次に目を開いた瞬間。 何が起こっているかなんて何も知らず——。
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