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危く声を立てそうになる僕の唇を九条さんが塞いだ。
呼吸さえ聞こえてしまいそうで怖い。
「だから――何が言いたいかって言うとこれだ」
征司の声に身を固くする僕の身体を
取り込むように一層強く九条さんは抱きすくめる。
と——ドアの隙間から何か。
紙切れのようなものが差し込まれるのが見えた。
「『サロメ』——おまえが見たいと言ってた芝居のチケットだ」
征司の言葉に九条さんがグッと身体を押し込み
僕の耳元で囁く。
「——彼にも見たいと言ってたんだ?」
「ッン……!」
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